二つの愛の大きな違い

前回述べたように、夫婦は価値観を共有することが必須ですが、
とりわけ、その中で最も重要なのは、愛に対する価値観です。
これはちょうど家の土台のような役割を果たします。

 

結婚における愛には、大きく分けて二つあります。
“本能的に自分の中に宿る愛”と“ゼロからつくりあげる愛”です。
前者は、男女が互いに惹かれ合う恋愛感情を指します。

 

ところで、“恋愛感情”とは一体何なのでしょうか?
『実用日本表現辞典』によれば、「相手を恋しいと思うこと、恋を抱いた感情」とあります。
男女間の恋心は、我知らず気付いたら生じる感情です。

 

以前の記事でも記したように、恋愛感情には継続性がありません。
男女が出会い、ふと気が付くと、相手に夢中になっている。
この感情は、結婚生活を続けるに従って、次第に消滅していくものです。

 

“これだけ愛し合っているのだから、未来にはもっと素晴らしい世界が待っている!”と
男女は期待して結婚しますが、現実はそのようにはいきません。
最初の1、2年は、二人にとって快適な生活が続くかもしれません。
ところが、最高潮に一度達した恋愛感情は、とてもうつろいやすく
努力しないと、いずれ下がるようになっています。

 

また、二人の愛が消滅するだけにとどまらず、時に激しい嫉妬や嫌悪感に
変貌してしまうこともあります。
昨今のニュースや家庭崩壊の現実からも分かるように、
“愛している”という感情が、相手を幸せにしないどころか、
相手を傷つける“凶器”になることすらあります。
それでも多くのカップルたちは、相手を恋い慕う感情が、
幸せな結婚生活の原動力なのだ、と錯覚しているのです。
このことが分からずに結婚すると、「愛していたはずなのになぜ?」と
混乱してしまうのです。

 

日本では毎年、3組に1組の割合で離婚が成立していることからも分かるように
夫婦関係ほど難しい人間関係はありません。

 

それでは、どのような夫婦がずっと円満でいられるのでしょうか?
たくさんの夫婦を調べてみると、結婚相手を親や信頼している人から紹介された、
また、お見合いで知り合ったという背景が見受けられます。
実際に、見合い結婚の離婚率は全体の1割程度であるというデータも出ています。

 

昭和の世代は、半数が見合い結婚でした。
私の祖母は大正生まれですが、「おじいちゃんと初めて出会ったのは結婚式当日だったよ」
と聞かされてきました。
昔は、それがごく当たり前のしきたりだったのです。
相手がどういう人か分からずに、いきなり家庭を出発するのは、
どれほど不安なことでしょうか…。

 

ところが、このような夫婦には、特別な“ごほうび”が与えられることになります。
それは、“(夫婦の)積み上げた愛”という、
苦難を乗り越え、努力して夫婦関係を築き上げた二人に送られる宝物です。
何もないところから“積み上げた愛”は強固で、継続性があり、家族の土台となるのです。

 

“努力なしに現れる恋愛感情”と“ゼロからつくりあげる愛”、
この二つの愛には大きな違いがあることがお分かり頂けたかと思います。
幸せな結婚を成就するためには、後者の愛以外では成り立たないのです。

 

次回は、夫婦の愛について、さらに深く洞察していきます。

 

小川陽子

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