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私たちは親として、せっかく部屋をきれいにしたのに、その部屋を散らかして遊んでいる子どもを見ると、「きれいにしなさい」とか「汚くするんじゃない!」と子どもを叱ることが多いと思います。その時、子どもを注意する親の動機は、子どもの気持ちを尊重するというよりも、親の事情を優先しています。楽しく遊ぶ子どもの気持ちよりも、部屋をきれいしたい親の気持ちを優先しているのです。
ここで一つ知っておかなければいけないことは、子どもは怒っている親の動機を明確にとらえているということです。子どもは、親の動機を見抜くチャンピオンなのです。
もう一つの例を紹介します。
あるお母さんが2時間かけて台所を一生懸命に掃除し、きれいになった台所を見ながら、満足げに昼食を準備しました。5歳になる娘と一緒に食事をして、お母さんは他の用事があって早めに台所を離れました。しばらくすると、台所からお皿の割れる音がしたというのです。お母さんはびっくりして台所に飛んでいきました。すると、割れたお皿の横に娘が立ち尽くして泣いていたというのです。お母さんは思わず『何してるの!せっかくきれいにした台所がまた汚くなっちゃったじゃないの!あっちに行ってて!』と娘を怒りました。しばらくして、お母さんは娘を怒ったことを後悔して『ごめんね』と謝り、皿を割ってしまった理由を聞いたのです。すると、その子は“お母さんが忙しくしているので、お手伝いしたくて、皿を運ぶ途中に割ってしまった”というのです。きれいな台所を優先するがゆえに、娘のお母さんの手伝いがしたいという優しい気持ちを傷つけてしまったのです。
子どもは、親を許す力を持っています。そして、親が愛しているものを自分も同じように愛していきたいと望んでいるのです。そして、親の動機を見抜くチャンピオンです。子どもの行動を変えたいとだけ望んでいても、愛は子どもに届きません。子どもの気持ちをわかりたい、共有したいと願って接していけば、子どもは自然と親の愛情を感じていくようになるのです。
心から子どもの本性を信じ、「私の子どもは素晴らしいんだ」と信じ、親の気持ちよりも子どもの気持ちを優先していくことが大切です。そうすれば子どもは、その本性にしたがって、親の愛するものを愛していくようになるのです。
多田聰夫