「親が変わる」とは?

最近は、子女教育についての様々な本が出ています。その多くは、「親が変わらないといけない」とか、「親が問題」などと書かれています。そういった内容を読むと、親としてはなかなかつらいものがありますね。しかし、わが子に関することですから、「子供のためならば」と思って決意するわけです。さて、では親はどのように変わったらよいのでしょうか。
子供には自分の部屋ぐらいは片付けてほしいと思います。ですから、「自分の部屋ぐらいは片付けなさい」と言ってしまいます。朝、自分で起きてこない時などは、「早く起きなさい。自分のことでしょ」と、学校に行かない子には、「学校に行きなさい」と言ってしまいます。親としては、このままではどうなってしまうのだろうかと子どものことを心配して、子どもにひと言、言ってしまうのです。

 

親は、気になる子どもの行動を変えたいと願います。朝寝坊する子が早く起きるように、勉強しない子が勉強するように、親は子どもの行動を変えたいと願って子どもに言うのです。親としては、子どものことが心配ですから、ついつい子どもに言ってしまうのです。しかし、そのように繰り返していると、だんだんと子どもに対する悪いイメージがついてしまいます。そしていつしか、「どうしてこんな子になってしまったのか」と、子どもを信じられなくなってしまうのです。すると子どもは、親の言葉の動機を見抜いて、こう親に言い返します。「母さんは、僕のことが心配なんでしょ。結局、僕のことを信じていないんだね」と。つまり、子どもの行動を変えたいと思って子どもを見ることで、子どもに「親が信じていない」というメッセージが伝わり、結局、親の愛が届かないことになるのです。

 

一方、親の愛情が子どもに届くようにするには、子どもの気持ちを感じたい、共感したい、分かち合いたい、という心情を中心として子どもに接することです。そのためには、「行動を変えたい」という動機ではなく、「気持ちをわかりたい」と思って、子どもの話を共感的に聞いてあげることが必要です。そうすることによって、子どもは親の動機の中

に愛情を感じ、素直な心を表現してくれるようになります。そして、親の愛情と願いを感じることで、自ら行動を変えていこうとするのです。

 

「親が変わる」ということは、子どもに対して「行動を変えたい」と思って接するのではなく、「子どもの気持ちをわかってあげたい」という愛情で子どもに接するように変わるということです。そうすれば、子どもは自ら行動を変えようと努力するようになるのです。そして同時に、親の方も愛情が成長して行くことになるのです。

多田聰夫

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