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一つの事に集中しようとしても、様々な雑念が入ってきて、集中できなくなることがよくあると思います。雑念がつぎつぎと心の中に入ってきて集中できなくなる様子は、まるで駅に停まってすべての乗客を乗せる電車のようです。乗客でいっぱいになった電車のように、私たちの心も雑念でいっぱいになります。
たとえば、学校で勉強に集中しないといけないのに、昨日先生に怒られたことを思い出して、勉強に集中できなくなることがあります。子供から暴言を吐かれた母親がそれを忘れることができず、その過去の「思いの電車」に乗ったままでいるために、目の前にいる子供を愛せずにいることもそうです。明日の試験に向けて勉強しないといけないのに、試験のことを考えて不安になり、未来の「思いの電車」に乗ったまま、なかなか今集中できなくなることもあります。私たちは普段からそのような「過去」や「未来」という“思いの電車”に乗り続けていて、今すべきことに集中できなくなってしまうのです。今すべきことに集中する代わりに、過去の経験や未来に対する空想と恐れ、そして不安にしっかりととらわれて生きているのです。
これでは、過去を克服することもできず、よりよい未来を創造することもできません。問題は、私たちが知らず知らずのうちにこのような“思いの電車”に乗っていることです。
過去というのは、「今」生きていることを後で見れば「過去」となります。ですから、今をどのように生きたかが、私たちの過去を作り上げるのです。「今」を一生懸命生きていれば、私の過去は有意義なものになるでしょう。また「未来」も、今をどのように生きているかによって決定されます。今一生懸命生きていれば、私の未来は希望ある未来として映ることでしょう。
過去や未来の、どちらの“思いの電車”に乗ったとしても、最も重要な場所である「現在」にいないことになります。「現在」という瞬間こそが、私たちには実際的なものなのです。時間は常に「今」があるだけです。もし、このまま“思いの電車”に乗り続けていくならば、その終着駅は幸福ではなく、不幸という駅に着いてしまうかもしれません。
“思いの電車”は過去や未来に対して、恐れ、ねたみ、怒り、憎しみなど、様々な思いをたくさん乗せています。それが、今集中しなければならない現在を見えなくしてしまっているのです。不幸にも、このような考え方こそが私たちの未来を決定しています。しかし私たちは、そのことに気づくこともないまま、過去や未来の“思いの電車”に乗り続けているのです。
しかし、絶望する必要はありません。その騒音はすぐに静かになるでしょう。
“思いの電車”に乗らない方法があるのです。
まず、自分が過去や未来の“思いの電車”に乗っていることに気づいて、自覚する必要があります。なかなか集中できないのは、私が“思いの電車”に乗ってしまっているからなのだと気づく必要があります。
自分の問題点が“思いの電車”にあることが自覚できれば、今度はその“思いの電車”に名前をつけてみましょう。たとえば、「葛藤の電車」「怒りが湧く電車」「自信がなくなる電車」などと名前をつけるのです。心の中ではっきりとその名前を言ってみてください。あまりにも“思いの電車”が多い場合や次々とやってくる場合には、まとめて「思いの電車」と言ってみてもいいでしょう。
そして、「思いの電車よ!私は乗らないから、早く過ぎ去れ!」とはっきりと意思表示するのです。それを何度も何度も言ってみましょう。そうすれば、自分の意志で“思いの電車”に乗ることなく、やり過ごすことができるようになるのです。過去にいろんな事件があって恨んでいる人がおり、その人のことを思えば「恨み」と言う“思いの電車”に乗ってしまうことがあれば、心の中ではっきりと「“恨みの電車”よ!私は乗らないよ。早く行ってしまいなさい!」と言ってみてください。一度だけでなく、何度も何度も言ってみるのです。それを繰り返しているうちに、しだいに自分の心に中の雑念をコントロールできるようになり、「今」という大切な時間に、今やるべきことに、集中することができるようなるのです。そうすれば、自由に“思いの電車”から降りて、今を大切にできるようなります。
さあ、まず“思いの電車”とは一体何なのかを話し合ってみてください。そしてあなたが、どんな“思いの電車”によく乗るのかを考えてみてください。
そして今日から7日ほど、“思いの電車”を強く意識して自覚するようにしてみてください。そしてはっきりと、「私は乗らないから早く過ぎ去れ!」と心に言い聞かせてみてください。そうすれば、見違えるほど今に集中できるようになるでしょう。そして、素晴らしい過去と未来を手に入れることができるはずです。
多田聰夫