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積極的な聴き方は、子供が問題を抱えているとき、子供が自分の心を開き、本当の欲求や真実の感情を打ち明けるのを助ける、強力な道具です。
しかし、問題解決の責任は子供に残しておくようにしましょう。子供は自分とは別の人格であることを認め、独力で問題を解決していく子供の内なる力を信じる方法なのです。
具体的な方法としては、まず、相手の言葉を「くり返す」。次には、相手の言葉を「言い換える」。そして、次の段階は、相手の心を「汲み取る」ことを通して、心を共感的に理解するようにして行きます。
ここで少し演習をしてみましょう。
以下の文章は「親業」の中で紹介してある実際にあった親と子の会話です。子どもの発言を読んだあと、子どもの感情をもっとも適切につかんでいると思う親の応答を選んでみてください。
○中学一年生と母親の会話
1.子ども:お母さん、僕テニス部やめて柔道部に入りたいんだけどだめかな。
親:
a. あら、テニス部より柔道部がいいのね。
b. なに言ってるの、まだ1ヵ月にしかならないじゃない。
c. なにかいやなことでもあったの?
2. 子ども:そうなんだ。柔道部は強くなると段がもらえるしさ、男らしくていいと思うんだ。
親:
a. そう、柔道部のほうがいいように思えるのね。
b. 誰か仲良しが、柔道部にいるわけ?
c. 男らしさってなにかしらね。
3. 子ども:そう、テニス部なんかよりずっと面白そうだよ。テニス部はいやだよ。
親:
a. でも、テニス部へ入るときだって、面白そうだって言ってたじゃないの。
b. またすぐ気が変わって、他の部に移りたいなんて言うんじゃないの
c. そう、テニス部はもう本当にやめたいと思っているようね。
4. 子ども:やめたい気分だよ。一年生は球ひろいばっかりなんだ。まだ一度も打ったことがないんだよ。
親:
a. 一年生が球ひろいをするのは当然じゃないの。
b. 球ひろいばかりで、いやになってしまったのね。
c. 球ひろいくらいできないで、テニスができるわけないわよね。
5. 子ども:そうなんだよ。球ひろいにはもううんざりなんだ。それに上級生がものすごく威張ってるんだ。
親:
a. 運動部の上級生なんてどこでもいばっているんじゃない。
b. そういうことに耐えてこそ上達すると思うけど。
c. 球ひろいの上に、上級生にいばられて、いやになってしまったわけね。
6. 子ども:そうだよ。しかも女子の上級生のほうがいばっていて、時々ラケットで頭をぶつんだよ。
親:
a. まあいやだ。女のくせにひどいことするわね。
b. 女の先輩もそんなことするの。新入生も大変なのね。
c. 誰がそんなことするの?先生に言ってやめるように注意して頂いたら。
7. 子ども:そう。でも、どの人もそういうわけじゃないんだよ。とてもいい人もいるんだから。
親:
a. とてもいい人もいるのね。
b. そりゃそうでしょう。ラケットでぶつような人ばかりじゃたまらないわ。
c. ああ、それを聞いて安心したわ。
8. 子ども:そうさ。だから一年生は先輩がちゃんと練習できるように、球ひろいをして協力しているのさ。
親:
a. 先輩はたてなくちゃね。
b. 先輩の練習に協力しているわけね。
c. あなたも二年生になれば一年生に球ひろいさせるわけでしょ、順番よ。
9. 子ども:そうだよ、球ひろいする人がいなければ、上級生が困るだろ。 みんなそして上級生になっていくんだよ。
親:
a. 上級生も一年生の時は球ひろいしたんだと気がついたようね。
b. 球ひろいだって大切な仕事よ、頑張らなくちゃ。
c. いい上級生とだけつきあえば、大丈夫なんじゃない。
10. 子ども:そうだよ。明日から一生懸命球ひろいするんだ、ときどきなら打たせてくれるし、素振りの練習もつけてくれるんだよ。
親:
a. そう、テニス部を続けるつもりになったようね。
b. なんだ、球ひろいばっかりじゃないじゃない。
c. それじゃやめるなんて言わなければいいでしょ。心配しちゃったわ。
11.子ども:うん。柔道部のことは、また高校に入った時にでも考えるよ。
親:そう。じゃあ、がんばってね。 (「親業」より)
「積極的聴き方」も「共感的聴き方」と同じように、子供に親の愛情が伝わる聞き方です。「共感的聴き方」を何度も何度も繰り返して実践することで、自然と「積極的聴き方」もできるようになります。知識としてはわかっていても、なかなか家庭の中ですぐにうまく実践できないことがあると思いますが、なにより相手の気持ちを分かってあげたいという“人の為に生きる”精神で取り組んでいけば、必ずうまくできるようになるはずです。
最後に講座を受講された親の感想を紹介します。
・「教育して下さったことを具体的に家庭に定着させる為に、とても整理された具体的な内容でした。相手の最初の言葉にとらわれて判断してしまうのは、相手の神様より与えられた本心を信じていなかったからだと痛感しました。なかなかすぐには実践出来ませんが、とても希望を感じました」
・「否定的な要素を込めず、常に相手を思いやる愛の実践とも言える「積極的聴き方」が身に着いたらどんなにいいかと思います」
・「私達は、人の話を自分の作った枠組みの解答で答えてしまっているところがあると思います。そうじゃなくて、相手からの質問には、素直に相手の言葉で言い直し返答するということが大切なんだ、と強く感じました。また、母と子の例は分かりやすかったです。あの例の中において、母は、話を聞いているだけだったけど、子供はすっきりして、自分で自分の納得の行く解答を見つけました。悩みと言うのは、つまるところ、自分の中で自分はどうしたいのかの解答は既に自分で分かっているのだな、と思いました」
多田聰夫
(親子の会話の解答)
1:a 2:a 3:c 4:b 5:c 6:b 7:a 8:b 9:b 10:a